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「浴室用洗剤」の買われ方

 コレクシア社が2014年2月に行った自主調査結果の中で、浴室用洗剤を購入した回答者のカスタマージャーニーレポート2点を用い、浴室用洗剤における消費者行動分析事例をご紹介します。

CASE1 40代男性(千葉県)
「家族のため洗浄力の高い商品を選び、風呂をきれいにしたい」

■この消費者の購買行動シナリオ


 堀口さん(仮名)は46歳になる千葉県のサラリーマン、妻と子どもとの3人暮らし。自宅の掃除は月に2回程度行っているが、基本は妻が行っています。今回はヤマダ電機で「バスマジックリン」を購入しました。
 堀口さんにとってバスマジックリンは、いつも購入している浴室用洗剤のブランド。売り場では様々な種類の「バスマジックリン」が売られており、売り場のPOPやポスターなどを見て、その時の気分で「消臭プラス」などサブブランド商品を選ぶことを楽しんでいます。堀口さんがバスマジックリンを買う動機は、「家族のために洗浄力の高い商品を選び、風呂場をきれいにしたい」ということです。そのため、家族が満足するよう、有名メーカーの高い洗浄能力がある商品を基準に選んでおり、その結果「バスマジックリン」をいつも購入しており、今後も使い続けたいと考えています。



■この消費者の購買行動の特長


 まず注目する点は指名買いであり、商品選択を楽しんでいることです。ブランドはいつも購入している定番を選ぶが、ブランド内では「その時の気分で買う種類を変えている」とあり、消臭やアロマなどのサブブランド商品をバラエティシーキング型で選んでいると考えられます。これは、現在は指名買いで「バスマジックリン」を購入しているものの、バスマジックリンの中でその時々の購入商品を比較し、選択しているため、「防カビ」「アロマ」など、カテゴリートレンドに合わせたラインナップをそろえることが、この消費者に「バスマジックリン」ブランドを選択することを楽しませて、指名買いし続けてもらうことに有効と考えられます。

 次に、購入の動機は「家族のため」という動機が挙がっており、「社会的動機型」の動機類型であると読み取れます。また、「洗浄能力」を基準に選んでいることが読み取れるため、他者のために「洗浄能力」というパフォーマンスを評価軸として商品選択している傾向がみられます。そのため、家族からの不満や反対が起こった場合や、「バスマジックリン=洗浄能力が高い」というブランドイメージが崩れた場合は、ブランドスイッチが起こる可能性が高いと考えられます。加えて、この消費者はバスマジックリンに関する情報は「店頭のPOPやポスター」にのみ接触していると回答しているが、家族にとっての「バスマジックリン」のブランドイメージを維持するためのTVCMなど、他媒体の施策も重要と考えられます。

 また、この消費者自身が掃除を行うことは少なく、「掃除は家族(妻)が行うことが多い」と回答しており、関与・態度共に高くないことも読み取れます。

CASE2 20代女性(東京都)
「香り」が決め手となって購入



■この消費者の購買行動の特長


 この消費者には「香り」が決め手となって購入を決めていることが全体から読み取れます。特に、「爽やかな気持ちになれる、すっきりできる香り」であることに「共感」していることが「購入した」に繋がっているため、香りの良さという製品パフォーマンスはもちろん、自分の好みと合っていたことから「適合性決め手型」の選択・意思決定類型であると読み取れます。

 また、「自宅の在庫が減った時 いつも利用している」商品であることが評価基準となっており、定番商品として「ブランド指名型」の選択をされていると読み取れます。しかし、浴室用洗剤を選ぶ重視点の中では「新製品」であることが「ブランド」よりも高い為、自分の好みとより合う他社ブランド商品があれば、ブランドスイッチが起こる可能性も低くないと考えられます。

 購入の動機は「CMを見た」事が背景にあり、他にもTVCMが香りの良さの評価に影響していると回答しているため、情報関与の類型としては「広告・報道レレバンス依存型」の傾向があると考えられ、「バスマジックリン ローズの香り」のTVCMが消費者のレレバンス(共感)を得られたと読み取れます。

まとめ
「台所用洗剤」(バスマジックリン)の消費者行動

 台所用洗剤は指名買いで買われているブランドが固定されている傾向が見られますが、その中でも以下の2つのタイプの消費者行動があることが確認されました。

 1.普段買うブランドのサブブランド商品の中で、商品選択を行う
 2.特に特定のブランドを支持していない消費者でも、新たな機能
   ベネフィットを備えた商品をトライアル購買する

 特に、普段買う商品ブランドが固定されている消費者については、今回の場合「バスマジックリン」のように特定のブランドの中にあるサブブランド「除菌プラス」「ローズの香り」等の中で、商品選択を楽しんでいる傾向がみられます。これらの消費者をすでに獲得できている企業では、消費者が店頭で商品選択を行う際に競合商品に目移りしないために、以下の施策を行うことが考えられます。

 1.サブブランドでカテゴリートレンドに沿った商品ラインナップを揃える
 2.POPや什器等を使用し、同一ブランド内でも商品の差別化を明確に
   コミュニケーションする
 3.ブランドイメージ評価や認知率をモニターし、TVCM等マス広告で一定の
   ブランドエクイティを維持する


 また、新規ブランドやブランドの顧客囲い込みが不十分で、シェアを奪うことを目的とした場合、以下の方策が考えられます。

 1.機能ベネフィットを高め、従来商品と機能で独自性を築く
 2.商品の適合性を高め、消費者コンテクストに寄り添った商品へ
   リポジショニングする

 このように、今回は2点の消費者行動図鑑から、消費者行動を分析し台所用洗剤の購買行動の傾向について分析しました。今回は2名のサンプルから分析したに過ぎませんが、より多くの消費者行動を読み解くことで、消費者行動の仮説を抽出し、施策の方針を検討することができます。消費者行動図鑑はこれらの図鑑(コンテクストレポート)を自社・競合ブランドの商品に絞って多数作成することや、コンテクストレポートで得られたデータを基に、定量的に検証することも可能です。詳細は別途お問い合わせください。