消費者の様々な買われ方を把握し、 利用シーン提案の発想を得たい。


 消費者行動図鑑は、複数の消費者の購買行動パターンを一度にデータ収集し、ターゲットとしたい消費者個人個人が持つ、様々な「購入に至ったストーリー」をまとめ、コミュニケーションプランニングのモデルケース・ヒントとして活用できます。以下の例では、購買行動パターンレポートを用いて、新たな利用シーンを軸としたコミュニケーションプランの仮説を抽出します。

「自社のタブレットPCのユーザー拡大に向けた、広告戦略を検討しています。タブレットPCといえば電子書籍の利用などはイメージしやすい利用シーンですが、さらにユーザーを増やすためには、どのような利用シーンでコミュニケーションしていけばよいでしょうか?」

「現在自社商品を購買に至った消費者のストーリーを広く集め、多くの消費者が共有するコンテクスト・シーンを軸に、コミュニケーションプランを検討しましょう。」


【分析の背景と概要】

 マーケット視点でのコミュニケーション仮説構築には、コンセプトとなりうる消費者インサイトを発見する為に、定性的なアプローチで調査を行う必要があります。近年ではエスノグラフィーに代表される観察調査の興隆もあり、リサーチによる仮説の発見がビジネスで活用され、消費者インサイトの発見に成果を挙げています。しかし、エスノグラフィーに限らず定性調査は、全般的に調査期間やコストが比較的大きくなってしまい、広告プロモーションの企画立案に向け、定性調査を行うことは現実的ではありません。そこで、消費者行動図鑑ではインターネットリサーチを用いることで、聴取したいターゲット消費者の意見を素早く複数回収し、ターゲットが持つインサイトの発掘をクイックに行うことを実現しています。

 以下の例では、自社商品購入者の「購買のストーリー」を複数聴取し、さらに抽出したコンテクストに該当する消費者の市場規模を定量的に検証した「購買行動パターンレポート」を用いることで、現在の購入者の中でも特徴的なコンテクストを定性的に見つけ、コミュニケーションプランの構築を行います。

アウトプットの読み方



 上図のレポートサンプルでは、タブレット端末を購入した人の買い方をまとめています。表の左から右にかけて、商品を購入する発端となる「問題認識」から始まり、商品の情報を集めたり、商品を評価し購入可否を検討する「情報探索・評価」を経て「購買」し、「購買後行動」へと遷移します。この消費者行動プロセスに沿って、代表的な購買プロセスをA~Cの3パターン掲載しています。それぞれの代表例は一人の回答者の回答であり、各パターンを左から右へ読み進めることで、その消費者の購買行動プロセスが読み取れます。

 この例ではまず、購買プロセスの「問題認識」「購買後行動」に特に注目します。注目する理由は、今回の分析では消費者が「どんな使い方をしたいか」「買った後にどう使っているか」を見つけ、利用シーンに沿ったコミュニケーションプラン検討する為です。まず、パターンAの問題認識を見ると、「みんなが持っているから」という理由が挙がっています。該当者の規模は12%と大きいですが、漠然としておりコミュニケーションプランを立てるには不十分です。パターンBはブログに喚起されてレジャー時に利用したいと考えた、というストーリーなので、アウトドアのシーンに注目したコミュニケーションにより、ガジェットを好むお父さんをターゲットとしたコミュニケーションが仮説として考えられます。更に具体的に、アウトドアでも釣りなのか、キャンプなのか、バーベキューなのか、より具体的なコンテクストは、カスタマージャーニー等を組み合わせることで、さらに文脈を深堀りして把握することができます。

 このように、消費者の行動パターンを広く把握することで、新たな利用シーン提案のためのヒントを、すでに購入し利用しているユーザーの行動から発見します。また、利用シーンの提案の後に連なる具体的な購買に至るプロセスもレポートに盛り込まれるため、シーン提案後のクロスメディア戦略検討にも活用できます。パターンBの消費者の場合は店頭で確認した後、安いチャネル(ネット)で購入する行動を取っているため、店舗での刈り取り強化や、WEB上での再認を促すよう広告展開するなどの示唆を得られます。さらに定性的な分析を深める場合には、ターゲットを絞ってカスタマージャーニーレポートを詳細に作成することや、パターンBに該当する消費者の詳細な使い方を把握するために、観察調査やインタビューを行う事も可能であり、より詳細な消費者分析へつなげてインサイトを発掘することも可能です。

 以上のように、消費者の行動プロセスに沿って個人の購買行動のコンテクストをまとめることで、コミュニケーションの仮説を作り、シーン提案の着想を得ることをサポートします。