消費者行動図鑑ができるまで 第2回
『分析結果から意味を見出す為に』(2/2)
 株式会社コレクシア 村山 幹朗 - 2014/5/27



消費者行動について、質と量の情報を同時に考える

 一方で定性調査は、消費者のコンテクストや消費者行動を観察したり、深く掘り下げる方面には長けています。しかし、定性調査では量的な検証が得られないだけでなく、対象者1人1人についてもコンテクストと意思決定、態度変容、購買行動とのつながりの強さや因果関係が不明瞭で、観察者の主観によって理解が異なる事が問題となります。消費者行動と購買行動についての間違った認識は、ひらめきやアイディアをミスリードしてしまいます。


 そもそもマーケティングは、「消費者行動の理解を通して製品開発やコミュニケーションにより消費者に働きかける為の情報を得て、自社ブランドに対する購買行動や態度に変容を促すための活動」です。極端な言い方をすれば、消費者行動のプロセスに”介入”して購買行動を促進する手段が4Pですから、体験について理解するだけでは不十分です。その体験がどう購買行動に繋がるのか、商材のトライアルやリピート、ファン化などのマーケティング目的にどう繋がるのかまで見えて初めて、消費者のコンテクストに対する深い理解は、戦略立案のデータとして価値を発揮します。


 そこにアドレスする為、消費者行動図鑑は、生活者のコンテクストという質的な情報と、そこから購買意思決定に至る購買プロセスの因果関係の強さが定量的に見られるように作られています。一般的なマーケティングリサーチとは少し違い「消費者行動について、質と量の両方同時に見られる」サービスとして、消費者行動に対する理解を深める事に貢献できればと思っています。



消費者1人1人に戻ろう

 実験室のように完全に実験条件をコントロールできる環境ならばよいのですが、現実の市場はそうはいきません。コントロールできないのであれば、せめて分析結果を解釈する時、「こういう人たちが、こういう行動をとっている。その行動プロセスの中で、この指標はこういう位置づけで、それがこれだけ増加しているということは、こういう解釈をしてもよいのでは」という解釈上の注意が必要となります。そしてその解釈は、分析結果や分析モデル自体にではなく、その分析結果を生み出しているデータのバックグラウンドに求めに行かないと、見えてきません。


 何かしら分析をすれば、データから何か意味のある情報が見えてくるのではないか、というのは幻想です。コレクシアの分析トレーニングでは、扱うデータが定量でも定性でも、シングルソースデータでもビッグデータでも同様に、「質の情報」と「量の情報」を同時に見るように、なければ自分で探すように教えています。盲目的に平均をみていても仕方がないのと同じで、いくら難しい高度な分析をしても、ビッグデータでも、最終的にデータから意味のある情報を創り出すためにはデータの後ろにある「人」、つまり「消費者」に回帰する事が求められるのです。


  

※次回の特集記事は6月上旬ごろ公開予定です。


株式会社コレクシア

村山幹朗

1984年、北海道生まれ。公立はこだて未来大学システム情報科学研究科博士前期課程修了。2011年、コレクシア設立。マーケティング・サイエンスと情報デザインが専門。市場調査クリニックやROI+等、分析から情報を創り提供する事業を展開。