消費者にとってより「自分ゴト」と
思ってもらえる商品を提供したい


 消費者行動図鑑は、消費者が購買に至るプロセスの分析だけではなく、消費者が商品を「自分ゴト」と感じるプロセスについても分析し、商品を「自分ゴト」にさせるための具体的な打ち手を示します。以下の例では「旅行」が自分ゴト化されていない消費者が、旅行を自分ゴト化していく過程を分析し、自分ゴト化に有効な打ち手をレポートにまとめています。

「近年の娯楽の多様化に伴い、減少しつつある旅行人口の拡大をする必要に迫られています。旅行に積極的ではない消費者に対して、旅行を"自分ゴト"としてもらうには、どうすればよいでしょうか?」

「普段旅行に行かない消費者が、旅行を自分ゴト化した過程を可視化し、自分ゴト化"ストーリー"と、自分ゴト化に効果のある"打ち手"から、新規旅行客の獲得プランを検討しましょう。」


【分析の背景と概要】

 近年は消費者の購買を直接促す広告よりも、購買に至るプロセスを促進することを目的とした広告を計画するケースが増えています。例えば今回の例の「旅行」の場合、そもそも「忙しいから旅行に行けない」と思っている人にツアーの内容と価格のみをコミュニケーションしても、自分にとって旅行は関係のないことだと思っている以上、パック旅行を買ってくれるとは考えにくいでしょう。

 広告がこういった問題に取り組む際には、消費者が旅行に行きたいと感じられるコンテクストを作り出し、旅行に行くことを徐々に"自分ゴト"としてもらって初めて、具体的に旅行の計画を検討し、その結果、旅行代理店のパック旅行商品や、航空券や宿が売り上がるというプロセスを経ていると仮説立てられます。そこで、本レポートでは、この"自分ゴト"の過程に注目して分析を行います。今回の例のように「旅行」という「コト」を自分ゴト化する事例だけではなく、具体的な商品が"自分ゴト"とすることで、商品やブランドとの絆を深め、より強く顧客をつなぎとめることにも応用が可能です。

アウトプットの読み方



 上図では、海外旅行に長期間行っていない消費者が持つコンテクストから、具体的に旅行を計画することを"自分ゴト化"する過程を可視化しています。まず、レポート左側には今回ターゲットとする消費者のプロファイルと、旅行が自分ゴト化されていない状態のターゲットのコンテクストが記載されています。

 次に、レポート中央に「知覚」「動機」「関与」の3段階の消費者行動類型と、その行動に関連するコンタクトポイントを記載しています。まず、消費者が旅行を自分ゴト化するきっかけを「知覚」するのは、SNSの友人の写真UPや、TV番組による観光地紹介が入口となっていると読み取れます。そこから次に、具体的な旅行検討の「動機」となるのは、TV番組でお得感・割安感などが伝わり、現実的に旅行が手の届くものであると感じることが動機となります。そして、自分で雑誌やプランを検索することで関与を深めていくというプロセスであると読み取れます。

 以上のプロセスの結果、消費者にとって旅行が自分ゴト化されたことが読み取れます。ここまでのプロセスから、次のようなコミュニケーションプランで具体的な関与・自分ゴト化に向かわせることが仮説として考えられます。

1.消費者が受動的に情報を得られるコンタクトポイントで、知人の旅行体験などレレバンスを感じられる旅行先・観光地の情報を与え、潜在的なニーズを刺激する。
2.旅行シーズンに向けた時期に、具体的な動機を後押しするための「現実感のある提案」をTV番組等で消費者に接触させ、関与させる。

 以降は、旅行雑誌やサイトで適切な情報を探せるように用意し待ちかまえ、旅行者を獲得していくというシナリオが考えられます。また、上記プランにおいて具体的なクリエイティブやメッセージを検討する際には、レポート左部の消費者コンテクストを元にして内容を検討することも有効と言えます。

 以上のように、消費者が"自分ゴト化"する過程をレレバンスプランニングレポートで明らかにすることで、具体的なプランニングのための仮説を得られ、コミュニケーション企画立案に役立てられます。